社会と個人 どう向きあうの

林住期 どのように暮らすのか。日々、自問自答する。

(273) 「ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた」(斎藤幸平著)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「学び、変わる 未来のために」というあとがきの中でこの作品への思いがつづられている。    ページ196
 

軽やかなタイトル。でも、内容は重く真摯だ。

コロナ禍の下で毎日新聞の連載をもとにしてこの本は作られたとのこと。テーマは24、現場は24というべきか。 
斎藤幸平さんは、マルクスの思想の世界的に認められた研究者。研究の根本のところに、貧困や環境破壊に対する怒りがあるという。「傷ついた人が心を癒すことのできる社会」を作りたいという願いがある。 
多くの問題の現場に行って直接見たいというのが、この本のきっかけ。彼の研究のモチーフである - ポスト資本主義社会を想像するために。
<コモン>を発見する熱意で。「あるもの探し」が始まる。
資本主義の危機の最たるものは、経済格差と環境破壊。
資本主義の枠内で解決できないから、<コモン>を構想し、実践する。研究者として伴走する心構えを感じる。
当事者・支援者、被害者・加害者、などの線引きを超えて、「共事者」として学び、行動し、発信する。斎藤さんの「学び捨てる」息遣いが聞こえる。

本の中で、気に入った点、メモで残したいと思うことなど列挙した。
紹介できるテーマ、現場は9つ。

 

第一章 社会の変化や違和感に向き合う   ページ11
ウーバーイーツで配達してみた   ページ12。
斎藤さん、4時間、9件配達して、3750円。  
これでは最低賃金以下の稼ぎだ。

京大タテカン 文化考   ページ30
今から、 50年前。清水寺から東山の麓を北上し、哲学の道、そして銀閣寺に至る散歩道を歩いた。そこから吉田山に登り、西に下るとそこが京大であった。
京都大学の時計台に「竹本処分反対」と書かれていた。時計台が大きなタテカンとなっていた。「竹本」とは、京大経済学部助教授竹本信弘のこと。別名、滝田修。門の近くにはタテカンが置かれ、大学の周りも色とりどりのタテカンだらけであった。
今とは違う時代状況だ。

 

五輪の影   ページ55  
五輪のための再開発ではなく、再開発のための五輪。 「祝賀資本主義」。  
「都営霞ヶ丘アパート」が新競技場建設のために解体された。弱者への配慮はどこに。   
「 行き過ぎた能力主義は、多様性の尊重やフェアの精神とは相容れない。 むしろ、スポーツの暴力性が「祝賀資本主義」の暴力性と結び付けは、暴力は暴走し、弱者は排除され、搾取され、とことん踏みつけられる」   ページ61 
 
何をどう伝える? 子どもの性教育   ページ70  
「……て性教育のポイントは、身体の自尊感情を高めることで自己肯定感を得ていくことである。 自尊感情が高ければ、自分の体を守ろうとするし、また何かあった時も自分の言葉で親に伝えることができる。それに他人の身体を尊重すれば、性加害をしてしまうリスクも抑えられるはずだ。」
『あっ!そうなんだ! 私のからだ 』( エイデル研究所)、読んでみたい。 2750円とちょっと高いが

あっ!そうなんだ!性と生: 幼児・小学生そしておとなへ

 

第二章 気候変動の地球で   ページ79。  

電力を考える   ページ80
神戸の新在家に石炭火力発電所があることを知らなかった。団地のすぐ近くに建設された。 まず一号基と二号基。そして、三号基、四号基と建設をされた。稼働と増設の差し止めを求めたが敗訴した。

  

 神戸新聞 (2023.2.1) から写真と地図を拝借

国道43号沿線は大気汚染に苦しんだ地域だ。  
今再び、発電所の被害に晒されている。  私も大阪在住でありながら知らなかった。

株式会社「生駒市民パワー」の取り組みも初めて聞いた。  
「その理念はこうだ。 環境に優しい太陽光エネルギーを地産地消する。 今までは外に流出してしまっていた電気代は街に落ちて、雇用を生み地域経済を潤す。さらに、電力事業の収益もどこに住んでいるかわからない株主の配当ではなく、地域の活性化という公共目的のために使われるようにして行く。 」   ページ86。 

いこま市民パワーが目指すもの | いこま市民パワーについて | いこま市民パワー株式会社

 

第三章。 偏見を見直し、公正な社会へ   ページ135 
差別に喘ぐ外国人労働者たち   ページ136 
正しい法律を作れば。 世の中は良くなると考えているが。 法律だけでは職場の差別はなくならない。 社会通念が変わらない限り。 外国人の訴えが無視されてゴミ箱に捨てられてないがしろにされるからだ。 だからこそ、差別禁止の明確なルール作りを各職場で行う必要がある。 だが、それを実行できるのは国ではなく、私たち労働者なのである。 差別はいけないという通念だけで、抽象的だったものを争議を通じて、 職場の規範として具現化して行くのだ。  
 
ミャンマーのためにできること。 知ることが第一歩    ページ143
「ミルクティー同盟」という形で、若者が地域を超えてミャンマー市民との連帯が始まっているという。香港、台湾、タイ、インドはティーにミルクを入れるその習慣があり、その名付けられたという。
反独裁サイン(3本指サイン)もその象徴だという。

絶対的な権威(けんい)とされてきたタイ王室。
王室改革案を否決した国会に対し、抗議デモで3本指を掲げる市民たち
バンコクで2020年11月    毎日新聞から拝借

つい、最近、映画鑑賞の後で、大阪南・難波でミャンマー民主化支援のアピールとカンパ活動を行われているのを見た。私は足を止めることなく通り過ぎてしまった。反省だ。
ミャンマーは2021年2月に国軍のクーデターが起こり、民主化指導者アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権が軍によって打倒された。この政変は、2020年11月に行われた総選挙でNLDが圧勝した後に起こった。内戦状態が続き、不安定な状態となっている。
ミャンマーは、1948年に独立を果たし、東南アジア諸国の中では、最も早く平和友好条約を結んだ国だという。日本とミャンマー(旧ビルマ)の関係は、第二次世界大戦中に、日本はビルマを英国からの独立を支援する名目で占領した歴史がある。
条約締結後、日本はミャンマーの発展を支援し、1970年には日本ミャンマー友好協会が設立され、文化交流や人的交流を促進してきたと聞く。

 

水平社、創立百年     ページ165。   

大阪市住吉区の浅香地区で受け継がれた言葉がある。  

<明るいところから暗いところは見えへんけど、暗いところから明るい所は見える>  

「明るい所にいる人々も暗い所へ行き、 根深い差別の問題を学び、暗いところをなくす努力をもっとできるはずだ」   ページ171。  

同感だ。

箕面市北芝地区の取り組み、面白い。

暮らしづくりネットワーク北芝 - であい・つながり・げんき暮らしづくりネットワーク北芝 | であい・つながり・げんき

 

アイヌの今   ページ187。  

最近、映画「ゴールデンカムイ」を見た。映画上映への前に『民族共生、象徴空間ウポポイ』 を紹介する動画が流れていた。アイヌについてほとんど知識もなかったが、映画のなかで、アイヌについて丁寧に敬意をもっと描かれていると感じた。  

私も一度は このウポポイを訪れてみたいと思う。  

ウポポイの近くに「慰霊施設」があるという。しっかり紹介されていないので訪れる人がまばらとのこと。  

この慰霊施設は日本政府が世論に押されてつくった。
和人が研究調査という名目でアイヌの箱を勝手に荒らして、盗掘、誰の骨かもわからない状態状態で保管してきたが、これへの批判が高まる中で、日本政府が先住民への遺骨返還ができなかった部分について、この慰霊施設で保管されることになったという。



わかりやすい「アイヌ」像が当事者を苦しめているという。「伝統衣装も着たくないし、アイヌ語も学ぶつもりはない」という当事者が存在している。そして、小熊を殺すイオマンテの儀式に拒否感を示す青年がいてる。

<和人/アイヌ>という2項対立で わかったつもりになったのは、映画「ゴールデンカムイ」をみて なるほどと思った私自身でもある。

「……わかりやすいストーリーからこぼれ落ちて、不可視化された人々の声に耳を傾けるということである。だが、それは実はあなたの感じている苦しみに耳を傾けることである。…… この社会では、あなたを含めて誰もがさまざまな理由で苦しんでいるにもかかわらず、その苦しみは『常識』とか『出世』とかの名の下で抑圧され、不可視化されているのだから」   ページ194。  

「…… 『自分の苦しみは大したことない』『もっと辛い人がいる』と、みんなが我慢したせいで、日本は『沈黙する社会』になってしまった……だとすれば、自分を大切にするために、自らの感情に言葉を与えることは、この誰もが『わきまえすぎている社会』において、他者と連帯するための一歩なのである。 」   ページ195

 

 

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