難波東宝シネマ別館で、9時15分からの部を鑑賞。こじんまりした会場、20数名の観客。
映画.COMから
「ミツバチのささやき」などで知られるスペインの巨匠ビクトル・エリセが31年ぶりに長編映画のメガホンをとり、元映画監督と失踪した人気俳優の記憶をめぐって繰り広げられる物語を描いたヒューマンミステリー。
映画監督ミゲルがメガホンをとる映画「別れのまなざし」の撮影中に、主演俳優フリオ・アレナスが突然の失踪を遂げた。それから22年が過ぎたある日、ミゲルのもとに、かつての人気俳優失踪事件の謎を追うテレビ番組から出演依頼が舞い込む。取材への協力を決めたミゲルは、親友でもあったフリオと過ごした青春時代や自らの半生を追想していく。そして番組終了後、フリオに似た男が海辺の施設にいるとの情報が寄せられ……。
「コンペティション」のマノロ・ソロが映画監督ミゲル、「ロスト・ボディ」のホセ・コロナドが失踪した俳優フリオを演じ、「ミツバチのささやき」で当時5歳にして主演を務めたアナ・トレントがフリオの娘アナ役で出演。
2023年製作/169分/G/スペイン
原題:Cerrar los ojos
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年2月9日
フリオ・アレナスという人気俳優失踪事件の謎を追うミステリー。
169分の時間を感じさせない刺激的な作品だ。
エンディングは涙が止まらない。
スペインのビクトル・エリセ監督を知らなかった。スペイン内戦終結の翌年・1940年の生まれというから84才。
劇中映画『別れのまなざし』の設定は、1947年。劇中映画は、フランコ独裁体制下(1939年から1975年) でとられたことになっている。
「ミツバチのささやき」 (1973年)や「エル・スール」 (1982年) も是非見たいと思う。
映画の冒頭と終わりにヤヌス像が映し出される。
ヤーヌス(ヤヌス Janus)は、ローマ神話の出入り口と扉の守護神。前と後ろに反対向きの2つの顔を持つのが特徴の双面神。1月を司る神である。入り口の神でもあるため、物事の始まりの神でもあった。
生と死、若さと老い。この映画のテーマだ。
マノロ・ソロ演じる 映画監督だったミゲル。人気俳優失踪事件の謎を追うテレビ番組から出演依頼がされたのをきっかけに物語は動いていく。
映画への愛があふれ出ている。
『別れのまなざし』の編集担当だったマックスの家の壁の右のポスター『夜の人々』。
1948年のアメリカ合衆国の映画。ニコラス・レイの初監督作品。
ミゲルが倉庫から持ち出したパラパラ漫画。
『ラ・シオタ駅への列車の到着』の動画をパラパラ漫画にしたもの。
『ラ・シオタ駅への列車の到着』は、リュミエール兄弟による50秒間の作品。
アナ・トレントがフリオの娘・アナを演じる。
『ミツバチのささやき』(1973年)は、主人公の少女・アナのひとことで幕を閉じる。「私はアナ」。少女役を演じたのが50年前のアナ・トレント。
親友と娘の熱意、そして、未完の『別れのまなざし』の映写は、フリオに奇跡を起こすのだろうか。
ミゲルがデュエットで歌う『ライフルと愛馬(My Rifle, My Pony And Me)』も良い曲だ。
『ミツバチのささやき』などビクトル・エリセ監督作品を観てきた人たちの感想はどのようなものであろうか。
私は、いっぺんにファンになった。
失踪の謎解きに関心を持っていかれながら、最後は泣いた。
失踪したのはなぜか、どのように記憶障害になったのか。謎は謎のままではあるが、色々としんみりと考えさせられた映画。
奇をてらわないシーンの切り替えも 逆にドキドキ感を呼び起こす。映画通の人には色々ニヤニヤしてしまうことがあるのではと思う。でも、そんなことに通じていなくても十分に楽しめる。
私の評価は95点。