社会と個人 どう向きあうの

林住期 どのように暮らすのか。日々、自問自答する。

(124) 日本の階層の実態はどうなっているのだろうか

 

 

 

 

 

選挙戦や国会論戦を見ていても心が躍らない。
コロナ禍での初期の段階での「給付金10万円」についての攻防は力が入った。

自・公は論外、維新も国民民主も関心外だが、立憲民主や社民、共産党、れいわにも共感を覚えることが少なくなった。
立憲民主や社民、共産党、れいわは、果たしてどんな層に訴えているのだろうと疑問に思うことがある。


それ以前に、私自身、日本の社会がどうなっているのか理解が及んでいないのかもしれない。私自身がどの階層に属しているのだろうか。


橋本健二早稲田大学人間科学学術院教授の階層分類によれば、世帯収入から見れば かろうじて「アンダークラス」に入らず、「正規労働者」との中間だ。
下の記事によると、貧困率の高いのが「アンダークラス」(38%)と「旧中間層」(20.4%)だ。
新しい資本主義は、ここへの支援策となっているのであろうか。

 

 

2年前9月の週刊ダイヤモンドの記事を紹介する。

 



dw.diamond.ne.jp

 

週刊ダイヤモンド 2021年 9/11号 [雑誌] (新・階級社会 上級国民と中流貧民) |本 | 通販 | Amazon

 

 

貧困大国ニッポンの「階層データ」初公開!
全5階級で年収激減の格差世襲地獄

週刊ダイヤモンド』9月11日号の第1特集は「新・階級社会 上級国民と中流貧民」です。日本社会は、格差社会よりもシビアな「階級社会」へと変貌を遂げていた。一握りの上級国民を除き、誰も上昇することができない理不尽な世界だ。その残酷な実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)


あなたはどの階級?
1億総転落の「格差世襲」地獄

 もはや、日本は経済大国ではなく、貧困大国になってしまったのかもしれない。

 今も日本の国内総生産GDP)は世界3位の座にあり、辛うじて国力としての豊かさを保ってはいる。それでも、働き手個人の豊かさがないがしろにされているという意味において、日本は貧困放置国家へ落ちぶれてしまったも同然である。

 そもそも、日本で格差拡大が始まったのは、1980年ごろのことだ。それから40年。産業別、企業別、男女別のどれをとっても、賃金格差はいまだに解消されるどころか、拡大を続けている。

 



 日本の格差問題を固定化し、かつ深刻化させたのは、80年代から急速に労働現場に浸透した非正規労働者の存在である。正社員が担っていた仕事の一部を、低賃金の非正規労働者に置き換えていったのだから、格差が拡大していくのは当然のことだ。

 今の日本社会を、「格差社会」などという言葉で表現するのは実態を表していない。格差社会よりもはるかにシビアな「階級社会」へ変貌を遂げていたのだ。

 それは、出自や教育環境、就職時期の経済環境などによって階級が決まる「現代版カースト」ともいえる理不尽な世界だ。

 厄介なことに、階級格差は親から子へ、子から孫へと世代を超えて連鎖し受け継がれていく。世襲されることで、格差は加速度的に広がっていくのだ。

 

初公開データで判明
コロナが直撃した「二つの階級」

 そして、新型コロナウイルスの感染拡大は、階級格差をさらに広げる「副作用」を引き起こした。結果、日本人の脳裏にかすかに残っていた1億総中流という意識を完全に打ち砕いてしまった。

 階級格差の苛烈さは、あるデータを見れば一目瞭然だ。

 橋本健二早稲田大学人間科学学術院教授は、データを駆使して日本社会の階級構造を定点観測してきた格差問題のスペシャリストである。今回、橋本教授の協力を得て、コロナショック前後で世帯収入、貧困率、働き方がどう変わったのかを徹底検証した「階層調査データ」を初公開する。それによれば、〝格差世襲〟を裏付ける衝撃の事実が明らかになった。

 データの詳細解説に入る前に、階級の分類について説明しよう。

 橋本教授は、日本社会を形成する階級を、職種や雇用形態などにより五つに分類してきた。

 



 血統や資産を持つ「資本家階級」、大企業エリートやホワイトカラーなどの「新中間階級」、自営業者や家族経営従事者などの「旧中間階級」、単純作業やサービス業・販売業などの「正規労働者」、非正規労働者の「アンダークラス」の5階級がそれだ。

 今回のコロナ危機が、それぞれの階級に属する人々にどのような生活・働き方の変化をもたらしたのか。2021年の1月から2月にかけて実施した「三大都市圏調査」で明らかになった。

 その結果、コロナショックを境に、資本家階級からアンダークラスまでの全5階級において、年収が激減するという衝撃の結果が導き出された。

 ただし、コロナによる「打撃度」
には、階級によって大きなばらつきがあった。

 

自営業の「旧中間階級」年収127万減!
旧中間階級は中流から滑り落ちた

 端的にいえることは、コロナ禍は人々に平等に襲い掛かったわけではないということだ。

 



 二つの階級──、旧中間階級とアンダークラスに集中砲火を浴びせた。

 とりわけ打撃が大きかったのは旧中間階級だ。世帯の平均年収が19年には805万円あったのに、20年には678万円。わずか1年で年収が127万円も激減した。

 19年は新中間階級(863万円)と肩を並べるレベルだったのに、20年は正規労働者並み(644万円)まで落ち込んでしまった。完全に「中流」から滑り落ちてしまったのだ。

 アンダークラスの惨状も厳しいものがある。もともと低賃金労働が多い階級ではあるのだが、20年の世帯の平均年収は393万円と400万円の大台を切ってしまった。世帯収入の減少率12.0%と旧中間階級の15.8%に次いで落ち込みが激しい。

 貧困率でも、旧中間階級とアンダークラスの厳しさは一目瞭然だ。貧困率とは、低所得で経済的に貧しい状況にある世帯の割合を示す指標のことをいう。20年の貧困率では、旧中間階級20.4%、アンダークラス38.0%と高止まりしている。

 負の影響が偏った背景には、その階級の人々が従事している業種特性がある。

 橋本教授は「緊急事態宣言などコロナ対策では、さほど説得力のあるエビデンスもないのに、飲食店、とりわけ酒類を提供する飲食店が狙い撃ちされた。その上、十分な補償も行われなかったため、旧中間階級が経営難に陥った」と解説する。

 また、旧中間階級には、装飾品や衣服、家具など不要不急のものを扱う自営業者も多く、やはり経営難に陥っているケースが多い。

 そして、これらの飲食店や小売店には、非正規労働者が多く働いている。だからこそ、この二つの階級が打撃を受けたのだ。

 ただでさえ、旧中間階級では自営業者の衰退が進んでいる。アンダークラスに至っては、貧困層の拡大に歯止めがかからず、経済的苦境に置かれている労働者は多い。

 一方で、コロナ禍が新中間階級と資本家階級へ与えた負のインパクトは世帯の平均年収が下がったとはいえ、比較的軽微だった。

 そのため、資本家階級・新中間階級と、旧中間階級・アンダークラスとの「階級格差」はますます広がっていくことになる。


リストラ、教育無償化

同じ階級間での椅子とりゲーム

 『週刊ダイヤモンド』9月11日号の第1特集は、「新・階級社会 上級国民と中流貧民」です。

 日本社会“階級化”は、異なる階級間の格差を助長するだけではありません。同じ階級間の争いも勃発します。

 ある会社員が今いる階級にとどまろうとすると、同じ階級に属している別の会社員を蹴落としてしまうといった事態も起こっています。

 一番分かりやすいのが、大企業のリストラです。

 今回の階層調査では、最も影響が軽微だったのが新中間階級。でも、彼らの将来の見通しが決して明るいわけではありません。

 ホンダやパナソニックなど、かつてのエリート大企業が、まだ財務的余裕のある段階で、早期退職プログラムを導入し、生産性の低いシニア社員を標的にリストラを敢行しています。

 リストラは、ある意味、同じ組織内におけるポジション争い。中高年を退出させて空いたポストに若年層を配置するための強制手段だともいえるからです。すでに、「階級内闘争」が始まっているということなのです。

 大方の日本人の中流意識が崩壊していたとはいえ、新中間階級には大企業エリートが多く、自身を〝中の上〟と認識しているホワイトカラーは少なくない。その認識がいつ崩れても不思議ではないのが実情です。

 

 

 

関係する記事を朝日新聞から。1年前の1月の記事。興味深いのは次の部分。


 ”  若年非大卒層の方からは、大卒層をどう見ているのですか。 

 「概略を言えば、政治や社会活動に関心を示さない委任主義の傾向が強く、 
  社会の上層部が主導する便利で快適な社会システムを、ユーザーもしくは 
  フォロワーとしてつつましく享受しています。 
  大卒主導の社会を『下から目線』で見ているということです」 ” 

 

 

digital.asahi.com

 

(インタビュー)学歴分断を超えて 
           社会学者・吉川徹さん


2022年2月18日 5時00分

「日本の底堅さを支える非大卒層への政策的支援を考えないと、本格的な分断社会になってしまいます」
        =小杉豊和撮影 


 格差をめぐる生活実感は、勝ち組・負け組下流社会、上級国民など様々な言葉で語られてきた。2021年は「親ガチャ」という流行語も生んだ。吉川徹・大阪大学教授はかねて、日本社会の格差や不平等の根源に、大卒・非大卒という学歴差があると主張してきた。コロナ禍で「学歴分断」は進んでいるのか尋ねた。

 ――日本社会は「学歴分断社会」だと主張されていますね。

 「日本では、最終学歴が大卒(短大卒、高専卒含む)か、非大卒(中学校卒、高校卒、専門学校卒)かによって、社会に出てから大きな社会経済的格差が生まれることが、大規模な階層調査のデータから明らかになっています」

 「戦後、高学歴化は進みましたが、1980年代に大学などへの進学者がほぼ半数になってから伸び悩み、ここ数年は60%前後です。成人における大卒者は現在ちょうど50%。この比率はこの先20年は大きく変わりません」

 ――その学歴格差を「分断」とまで言い切るのはなぜですか。

 「分断とは、二つの集団の構成員が入れ替わらず固定化しており、集団同士が隔てられ、相互交流が少ない状態をさします。いま日本の現役世代は約6200万人ですが、70%以上が親と同学歴です。大卒の子は大卒、非大卒の子は非大卒という形で世代を超えて学歴格差が継承されている。夫婦間の学歴もほぼ70%が同じです」

 「大卒と非大卒は人生の経路が交わらず、交流も少ない。ある学生が、成人式で小中学校の同級生に再会して学歴分断を実感したと語っていました。『長い間会わなかったから存在さえ忘れていた。大学に進まない彼らとは生活スタイルも話題も重ならない』と」

    ■     ■

 ――格差を生む要因には職業や資産、経済力もあるのでは。

 「職業と経済力は目につきやすい要因です。ただ、平成の間に非正規化や転職が増えて雇用が流動化しました。所得はそもそも毎年変化して不安定です。一方、日本では最終学歴は固定的です。人生100年時代になっても学歴は生涯、履歴書に書き続けますから」

 「格差や不平等の議論で、大卒・非大卒という分類を重視するのは世界的な傾向です。日本社会はこの『学歴分断線』の上に、正規・非正規、都会・地方など、他の格差の境界が重なりあっているため、諸外国に比べてより分断が明確になっているといえます」

 ――大卒と非大卒の格差は具体的にどれぐらいあるのですか。

 「現役世代を大卒と非大卒、男性と女性、若年と壮年の8類型に分けたコロナ前のデータがあります。このうち、若年非大卒男性(20~39歳)の月の就労時間は大卒男性と変わらないのに、年収は約322万円で約50万円少なかった。転職経験者は63%と大卒より多く、非正規率も高めです。将来に対する不安感が強い半面、職場への適応の度合いは低い傾向にあります」

 「若年非大卒女性は家族の要因も重なり、さらに脆弱(ぜいじゃく)な状況にありました。そこにコロナ禍が直撃し、いま男女ともに非大卒層は最も苦しみ、困難な生活を強いられているのは間違いないでしょう」

 ――学歴格差はどうすれば小さくできるのでしょうか。

 「学歴格差は、直視しにくい『不都合な真実』です。初対面の相手に学歴を聞く人はあまりいない。学歴という言葉は、学歴偏重や学歴信仰といった批判的な文脈で使われることが多い。日本社会では表向き、『人間の価値や能力は学歴では見分けられない』と言われてきたからです」

 「でも、学歴差をなくすのは無理です。全員が同じ学歴では労働力を選別できず、産業社会は成立しないからです。学校教育には高卒、大卒、大学院卒などと異なる学歴集団をつくって序列化し、社会に送り出す機能がある。学歴は格差を生み出すシステムです」

 ――学歴格差は仕方ない、ということですか。

 「いいえ。そうではありません。昨年、親は選べず、親次第で人生が決まってしまう人生観を表す『親ガチャ』という言葉が流行語になりました。確かに大学教育を受ける機会は生まれによって大きく異なります。様々な格差の重なりから、子どもに大学以上の学歴を望む親は大卒層で78・0%いるのに対し、非大卒層では56・5%にとどまる。親から子への学歴再生産の実情は閉鎖的過ぎるので改善する余地はあると思います」

 ――大学無償化など高等教育への公的支援を増やすのですね。

 「経済的事情で大学進学を諦める若者は支援すべきです。ただ、『誰もが大学で学ぶべきだ』と一つの道だけに誘導する政策はいかがなものでしょう。豊かに生活できる地位を得るには大学に行くしかない、という考えを押しつけるのは『大卒学歴至上主義』にほかなりません」

    ■     ■

 ――でも、大卒の方が社会的経済的に恵まれるのでは。

 「大卒の学歴は必要ないと自分の人生を思い描き、十分に考えて高卒、あるいは専門学校卒で社会に出て行く若者は少なからずいます。なのに、大学に進学しない若い世代の存在を、すべて貧困問題のように見るのはおかしい。官僚も政治家も有識者もマスコミも、大卒の世界中心で生きてきたので、そのような非大卒層の心情が見えていません」

 「政府は大学院進学率の向上に躍起ですが、様々な誘導策にもかかわらず、この20年間、大学院進学者はずっと同年人口の10%程度です。自分の将来には大学院という学歴は必要ないと考える大学生が多いからです。同じように確信をもって大卒学歴を求めない高校生もいる。その生き方も尊重されるべきだと思います」

 ――では、非大卒向けにどんな支援が必要なのでしょうか。

 「私が提案したいのは、大卒と非大卒の若者たちとの間に極端な不平等が生じないようにすることです。若い非大卒就労者の所得向上、高卒者を積極的に雇用する地方の中小企業への助成などを進めるべきです」

 「コロナ禍で社会のインフラを支えるエッセンシャルワーカーが注目されました。米ハーバード大学マイケル・サンデル教授は、大学などに偏った教育の投資を、配管工や電気技師など大卒学歴を必要としないが尊敬されるべき仕事のスキルを学べる場を増やすことへ、振り向けるべきだと主張しており、私の考えと重なります」

    ■     ■

 ――学歴分断線をはさんで若い大卒と非大卒は、お互いをどう見ているのでしょうか。

 「現在の60代以上では、非大卒家庭出身で大卒になった『大卒第一世代』が70%ほどを占めています。彼らは、農業や工場労働の出自から、ホワイトカラーへと地位上昇を自ら体験した世代です。分断線を超えて上昇したから、両方の世界が見えており、社会全体の構成がわかっています」

 「一方、20~30代では、大卒家庭で生まれ、当然のように大卒になった人たちが半分以上になり、同年代の半分を、非大卒が占めていることを実感できていない。だから、非大卒層が社会を維持するための重要な仕事を担うことへの敬意も薄く、『上から目線』で彼らを偏差値ゲームの脱落者と見ているか、そもそも視野に入っていないのかもしれません」

 ――若年非大卒層の方からは、大卒層をどう見ているのですか。

 「概略を言えば、政治や社会活動に関心を示さない委任主義の傾向が強く、社会の上層部が主導する便利で快適な社会システムを、ユーザーもしくはフォロワーとしてつつましく享受しています。大卒主導の社会を『下から目線』で見ているということです」

 「コロナ前の8類型のデータを分析すると『大きな資産を持てるかどうかは本人の努力次第かどうか』という質問に『そう思う』と答える割合が一番高いのは若年非大卒男性です。社会的経済的に不利な状況に置かれているのに、大卒層や社会のせいとは考えず、自分の努力の帰結だと考えている」

 ――その態度は支配層に都合のいい「自己責任論」を受け入れているとは言えませんか。

 「自己責任というのは、上から下に向かって投げかけられる『上から目線』の言葉です。『大学受験で努力しなかった君たちの生活が不安定で苦しいのは自業自得だ』という、勝ち組によるマウンティングの構造が垣間見えます」

 「非大卒層の多くは、自身はがむしゃらに努力して上層を目指すことはせず、継承した地位の維持を重んじているのだと私はみます。それも成功した人生です」

 ――大卒層と非大卒層の分断は解消できるのでしょうか。

 「コロナ禍で、地道に社会を支える働き手に敬意の念を抱いた人は多いでしょう。在宅勤務はできても宅配サービスが滞ったり、エアコンが故障したりすればお手上げです。そこを受け持つ不可欠な人材である非大卒層が、極端な不平等を強いられない社会を全員で目指すことが必要です。理想的には上下の分断ではなく、水平的な共生の関係に近づけるべきではないでしょうか」
    (聞き手・中島鉄郎)

    *

 きっかわとおる 1966年生まれ。島根県出身。大阪大学教授。専門は計量社会学。著書に「日本の分断」「学歴分断社会」「学歴と格差・不平等」など。

 

 

 

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