社会と個人 どう向きあうの

林住期 どのように暮らすのか。日々、自問自答する。

(186) 「沈黙」から「雪崩」 今の現状の象徴

 

 

 

 

 

 

                                                           


 1947年

 1947年10月5日に、スターリン体制下のソ連邦ソ連共産党を中心に、ヨーロッパ8ヵ国の共産党が参加して、共産党情報局(Cominform)が結成された。
 当初参加したのは、ソ連ルーマニアブルガリアハンガリーポーランドチェコスロヴァキアユーゴスラヴィアの東欧諸国の共産党(党名は国によって異なる)と、フランス共産党イタリア共産党の西側諸国の共産党を加えて9国の共産党であった。戦後世界は、ますます東西冷戦が深刻化することとなった。
 コミンフォルムは、スターリンの死後のスターリン批判を受けて1956年に廃止された。

                                       

                                               岩波ジュニア新書「カレンダー世界史」(柴田三千雄編著)から        

 

 

 

 

『「同調圧力への服従」と「手のひら返し」、そして「後出しジャンケン」は連続している。この全体主義的な空気こそ、問題にしなければならない。』

ジャニーズ問題のメディアの取り上げ方、私はなんかもやもやした感じがあったが、そのもやもや感の正体は、全体主義的な空気だ。

ジャニーズ事務所の記者会見の「NGリスト」、PR会社の問題というわけにはいかないのだろう。記者会見を主宰する側の問題。
「NGリスト」から連想したのは、政治家が耳痛い記者の発言を抑圧した姿だ。ジャニーズ事務所は、このような政治家の姿勢から「学んだ」のだろうか。

 

 

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<論壇時評>ジャニーズ問題と空気 

全体主義的」こそ払拭を     中島岳志

2023年10月1日 07時00分
 ジャニーズ事務所は9月7日に東京都内で記者会見を開き、故ジャニー喜多川元社長による性加害の事実を認めて謝罪した。この会見に出席した元V6の井ノ原快彦氏(現ジャニーズアイランド社長)は、性加害問題について「何だか得体えたいの知れない、それには触れてはいけない空気というのはありました」と述べた。外部専門家による再発防止特別チームの調査報告書では、「マスメディアの沈黙」が問題にされた。大手企業も性加害問題を見て見ぬふりをし、ジャニーズ事務所のタレントを広告に起用しつづけた。


ジャニー喜多川元社長による性加害問題で、記者会見する
(左から)井ノ原快彦さん、東山紀之さん、藤島ジュリー景子さん
=9月7日、東京都千代田区


 この「空気」と「沈黙」に対して、高岡浩三・ネスレ日本元社長は、SNS上で「今更、ジャニーズ事務所のタレントと契約しないという大手クライアントこそ、この手の問題を知っていたはずだし、知らなかったとしたら恥ずべきことだ」と述べた。
 「現代ビジネス(オンライン)」(9月18日)に掲載された高岡氏のインタビュー(「《ジャニーズCM打ち切り問題》元ネスレ社長独占告白!」)では、メディア・企業・広告代理店がジャニー氏の性加害問題を知りながら「あまりの人気に忖度そんたくして知らないふりをして蓋ふたをしてきたこと」に問題があると指摘している。さらに、ジャニーズ問題は、ビッグモーターと損保ジャパンの癒着問題と同じ構造にあり、両者を一連の問題として考えるべきだと述べる。「損保ジャパンさんはビッグモーターさんがやっていたこと知っていたはず。しかし、見て見ないふりをしていた。業界は違いますが、本質的な問題は同じです」
 一方、ジャニーズ事務所の性加害問題をめぐる「沈黙」は、一転して、過剰な「雄弁」へと転化している。これまで報道を避けてきたテレビメディアは一斉に番組で取り上げ、広告に起用してきた企業は一斉に撤退を始めている。記者会見をきっかけに一種の雪崩現象が起きていると言えよう。
 この「沈黙」と「雪崩」は、不問とされてきた問題が追及されはじめたという点で真逆の現象に見えるが、同調圧力への服従という点では、同根の現象と言えるだろう。
 3月に英BBC放送がドキュメンタリー番組を放映し、4月に被害者が告白を始めた際には、企業は動かなかった。藤島ジュリー景子社長(当時)が5月に動画と文書で見解を示し、謝罪した時も、動かなかった。国連人権理事会作業部会の記者発表が行われた時も、再発防止特別チームの報告が行われたときも、動かなかった。しかし、9月の記者会見後にCMからの撤退を表明する企業が出始めると、堰せきを切ったように撤退が相次ぎ、雪崩現象が起きた。企業は「沈黙」から「雪崩」へと一気に手のひらを返したのである。
 「ジャニーズ問題で『CM起用中止の企業』に問う」(東洋経済オンライン、9月18日)に掲載された蔵元左近弁護士のインタビューでは、企業の同調的対応に疑問が呈されている。タレントをCMに起用する企業は、会見前にジャニーズ事務所に一定の対応を求め、その上で会見が不十分であると判断した時、はじめて起用の見直しを進めるというのが「筋」である。
 西山守「日本企業『ジャニーズからの撤退』に感じる違和感」(東洋経済オンライン、9月17日)では、コンプライアンスのあり方が俎上そじょうに載せられる。世界における企業コンプライアンスにおいては、自社だけではなく、取引先に対しても責任が生じる。今回の場合、企業がジャニーズ事務所と取引を続けるのか、終了するのかが問題の本質ではなく、「“取引企業としての責任を果たしているのか否か”という点が重要」である。
 「沈黙」から「雪崩」への手のひら返しは、自らの責任を不問にした上で、新しい空気に便乗する行為である。「大東亜戦争」の最中さなか、軍部のプロパガンダに便乗し、聖戦論を鼓舞した人が、戦後になると立場を一転することが往々にしてあった。彼らは戦中には指導者を声高らかに讃たたえ、戦後は口汚く罵倒した。そして、口をそろえて言った。「自分は初めからおかしいと思っていた」と。
 「同調圧力への服従」と「手のひら返し」、そして「後出しジャンケン」は連続している。この全体主義的な空気こそ、問題にしなければならない。

                                                      (なかじま・たけし=東京工業大教授)

 

 

私は、2003年の高裁判決を知らない。ましてや、フォーリーブズのメンバーの暴露本の存在も知らない。
ジャニーズ、フォーリーブズ、たのきんトリオ光GENJI、シブがき隊、みんな名前も顔も知っている。SMAP、嵐、はもちろん。でもそんなにファンでもないし、そのそも、ジャニーズ事務所にはそんなに興味がない。
今年3月のBBCの「ジャニー氏性加害問題」放送についても後から知った。

芸能事務所のトップの性加害が数百人に上ること、驚きだ。芸能事務所とかかわりのあった企業などがどのように関わってきて、今後どうするのか、注視していきたい。
様々なグループのパーフォーマンスを楽しんできたものとしてどうみていくのか考えたい。
私が、もしその現場にいたら何ができたのだろうか、性加害の事実を知ったならば何をするのだろうか。自問自答したいと思う。
もし、私が 性犯罪企業の一員(スター、など) であったならば、どう主張し、いかに行動するのだろうか。あるいは、そんなことはありえないことだが、私が新社長になったとしたら何ができるのだろうか。


 「ジャニーズの中では大きな権力を持っていたが、同時に最大の被害者でもあるかもしれない人が、表舞台に立ち、問題を収取する立場に置かれている。このねじれこそが、この問題の異様さでしょう」(磯野真穂・人類学者=文化人類学・医療人類学のコメント 10月4日付朝日新聞デジタルから)この意見に同感だ。表舞台に立ったからには、全力をどのように尽くすか、注目だ。

 

 

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私たちは反省します 東京新聞ジャニー喜多川氏の性加害問題に向き合えていませんでした

2023年10月3日 06時00分

 ジャニー喜多川氏の性加害問題を見過ごしてきたメディアに批判が向けられています。問題を調査した外部専門家らは「マスメディアの沈黙」が被害拡大の一因となったと指摘しました。東京新聞がこの問題にどう向き合ってきたのか振り返ります。(編集局次長 飯田孝幸)

週刊文春が1999年に追及を開始、裁判に
 喜多川氏による性加害は、週刊文春が1999年に連載で追及を始めました。喜多川氏側は名誉を傷つけられたとして文春側を提訴。一審は喜多川氏側が勝訴しましたが、東京高裁は2003年に性加害を認定。最高裁も喜多川氏側の上告を退けました。

 


高裁判決を報じる2003年7月16日付の本紙紙面


 本紙は週刊文春の報道後も、問題を正面から取り上げることはありませんでした。裁判の一、二審判決は掲載しましたが、二審判決の扱いは小さく最高裁の上告棄却は掲載していません。2019年7月に喜多川氏が死亡したときも、本紙は「所属タレントへのセクハラを報じられ、民事裁判で争った」と言及しただけです。
 国内メディアの沈黙が続く中、英BBC放送が今年3月に喜多川氏の性加害問題を報じると、4月12日には元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが外国特派員協会で会見して被害を告白しました。


 本紙はカウアンさんの会見以降、性加害問題の報道を続けていますが、読者から「ジャニーズ事務所から恩恵を受けていた報道機関が忖度そんたくした」「(マスコミは)事務所怖さに看過してきたように見られる」という批判が届いています。

◆裁判担当記者たちは「全く覚えていない」
 性加害を認定した高裁判決時に裁判取材に関わっていた本紙の複数の記者に聞くと、いずれも「全く覚えていない」という反応でした。私自身、最高裁決定時に裁判を扱う司法記者クラブにいましたが記憶にありません。
 私たちは記事にすると何らかの不利益があるから書かなかったのではなく、「しょせん芸能界のスキャンダル」というような意識で軽視していました。だからこそ、記憶にも残らない話題だったのです。
 芸能記者も「顔見知りの記者の携帯にしか出てくれない事務所なので、批判的な記事が出た後は取材がやりにくいだろうなという面倒くささは感じたが、不都合なことは書けないという意識はなかった」と忖度は否定しました。

◆「沈黙」した深刻さを反省します
 しかし、忖度がなかったからといって免罪されるわけではありません。東京工業大中島岳志教授はメディアや企業の態度は「『沈黙』から『雪崩』への手のひら返し」で「自らの責任を不問にした上で、新しい空気に便乗する行為」と批判します。

 「沈黙」の責任を考えてみます。多くのメディアの認識は「問題だと思ったが、不利益をこうむらないように取り上げなかった」か「たいした問題だとも思わなかった」に大別できるかもしれません。一見すると前者の方が悪質かもしれませんが、報道に携わる者としては問題とすら思わなかったことは深刻です。未成年者の性被害は「芸能界スキャンダル」ではなく人権の問題だからです。
 「当時はそういう時代だった」という言葉が社内でも聞かれます。しかし、人々の意識が変わった今も、私たちはBBCが放送するまで報道しませんでした。その人権意識の低さを反省しなければなりません。反省なきままジャニーズ報道を続けることは、中島氏の言う「責任を不問にして、新しい空気に便乗する」ことです。
 LGBTQ、女性の社会進出、障害者の権利、MeToo運動…。さまざまな問題は一部の人たちが勇気を出して声を上げ、メディアがその声を発信して、社会は変化してきました。
 私たちは、弱い者の声、少数者の声を大切にする新聞でありたいと思っています。しかし、ジャニーズ問題ではそれができませんでした。このことを深く反省し、弱者に寄り添った報道を続けることを約束します。

 

 

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