社会と個人 どう向きあうの

林住期 どのように暮らすのか。日々、自問自答する。

(90) 歌が 納まりどころをなんとなく 「ロストケア」鑑賞

 

 




 

3月26日、なんば東宝シネマで「ロストケア」の9時55分からの部を鑑賞。観客は8分のいり。年配の人が多かった。

長澤まさみ演じる大友秀美の母・加代 (藤田弓子が演じる) の口ずさむ「空に星があるように」。胸にしみた。
歌って 何百、何千の説明より感情を落ち着かせる力がある。作品の終盤のシーン。

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折り鶴は何の象徴だろうか。赤い折り鶴の秘密は最後の最後に明らかになる。




斯波宗則と大友秀美の涙、つられて泣いてしまう。

 

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「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である」(マタイによる福音書7章12節)

 

ひとが本当に願っていることを理解できるのであろうか。
誰も理解できないと思うのだが…… 言葉で「殺してほしい」と伝えられたとしても。

映画.COMから

松山ケンイチ長澤まさみが初共演を果たし、連続殺人犯として逮捕された介護士と検事の対峙を描いた社会派サスペンス。

ある早朝、民家で老人と訪問介護センター所長の死体が発見された。死んだ所長が勤める介護センターの介護士・斯波宗典が犯人として浮上するが、彼は介護家族からも慕われる心優しい青年だった。検事の大友秀美は、斯波が働く介護センターで老人の死亡率が異様に高いことを突き止める。取調室で斯波は多くの老人の命を奪ったことを認めるが、自分がした行為は「殺人」ではなく「救い」であると主張。大友は事件の真相に迫る中で、心を激しく揺さぶられる。

斯波を松山、大友を長澤が演じ、鈴鹿央士、坂井真紀、柄本明が共演。作家・葉真中顕の小説「ロスト・ケア」をもとに、「そして、バトンは渡された」の前田哲が監督、「四月は君の嘘」の龍居由佳里が前田監督と共同で脚本を手がけた。

2023年製作/114分/G/日本
配給:東京テアトル、日活



エンドロールで流れる主題歌は、森山直太朗 「さもありなん」。

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65歳以上の高齢者人口は、3600万人強。 総人口に占め ほぼ3割。
介護を理由とした家族間での殺人が厚生労働省の統計<2006~2019>によると年間20~30件起きているといわれている。
全体の殺人件数は、2019年 950件とのことだ。
介護殺人は深刻な実態だ。

老いることは誰もが通る道。映画を観て身につまされる。映画を観て社会の助けが及ばない「穴」に落ちることに恐怖したのではないだろうか。
自己責任を求められる世界・風潮を感じるのは私だけではない。
見たくない現実は見ないし、見たい現実だけ見る。

「確証バイアス」という言葉を思い出した。「見たいと欲する現実しか見ていない」 
共和制ローマ末期の政治家・ジュリアス・シーザーの言葉。

 



 



斯波宗則の父・正作を演じる柄本明の演技がすごすぎる。



斯波宗典の同僚・新人介護士を演じた加藤菜津、今後注目だ。峯村リエ、したたかな介護士役。こんな人が現実を確実に動かしているのだと思う。

 

 

 

lost-care.com

 





 

 

 

 

 

10人に3人が高齢者。周囲に、身近に高齢者がいる。街を歩けば高齢者が目立つ。
介護の現実は何となく知っている。経験もいろいろな形でしている。

「斯波宗則」は自分自身の中にもある。
そして、安全な地点から正論をはきそうになるのは私自身でもある。
さて、大友秀美のような誠実な検事は実在するのであろうか。この検事のように不都合な現実をしっかり見て向き合えば、悩みも多いけれど希望もあると信じたい。

 


テーマは重い。楽しい映画でもない。
でも、心に響く作品。松山ケンイチ長澤まさみ流石だ。
是非見てほしい作品。
評価は90点。

 

 

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