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岸田首相の政治の師、自民・古賀誠元幹事長が嘆いた…「敵基地攻撃能力保有は専守防衛を完全に逸脱する」

 

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2022年12月16日 06時00分

 


安保政策について話す自民党古賀誠元幹事長
=東京都千代田区

 

 岸田政権が安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など3文書改定を閣議決定するのを前に、岸田文雄首相が会長を務める自民党派閥「宏池会」前会長の古賀誠元幹事長(82)が本紙のインタビューに応じた。文書に盛り込まれる敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に懸念を示し「完全に専守防衛を逸脱してしまう」と主張。師弟関係にあった首相には「少なくとも国民にきちんと説明しなければならない」と注文した。

  (坂田奈央)

憲法9条も脅かされるのではないか

 古賀氏は、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾有事の懸念、北朝鮮の核開発など安全保障環境の変化は認めつつ「それで、なぜ敵基地攻撃能力を持つミサイル(保有)につながるのか。抑止力になるのか」と疑問視。「保有すれば実質的に専守防衛という基本がなくなり、憲法9条も脅かされるのではないか」と警鐘を鳴らした。
 「日本の安全保障は政治や経済、国防、外交といったありとあらゆる力を結集し、軍事大国への道を避けるのが基本だった」と強調。「軍国主義につながらない他の分野でやれることが多くあるはずで、冷静な議論が必要だ。例えば安全保障で一番大事なのは人口を増やすこと。子どもが増えることが一番の抑止力になる」と訴えた。
 宏池会は戦後の「軽武装・経済重視」の道筋を築いた吉田茂元首相を源流に、池田勇人元首相が創設。党内ではハト派色が強く「保守リベラル」と呼ばれ、衆院議員だった首相の祖父と父も所属した。古賀氏は2012年まで会長を6年務め、首相を指導。後継の会長に首相を推して退任した後も、名誉会長として長く後押ししてきた。


◆戦争がいかに愚かか、体験しているからこそ、平和言い続ける
 古賀氏は幼少時、太平洋戦争でフィリピンに出征した父を失った経験から「戦争につながること」に一貫して異を唱える。敵基地攻撃能力の保有に懸念を示すとともに「あの戦争がいかに愚かだったかを語り伝えていきたい」と話す。


  古賀氏との一問一答は以下の通り。

 ―日本が敵基地攻撃能力を保有することになる。
 「これは(戦後の安全保障政策の)大きな転換だ。安全保障を取り巻く環境が大きく変わり、何とかしなければならないと考える国会議員の気持ちは理解できる。しかし(3文書の改定が)抑止力になるかどうかは別問題。敵基地攻撃能力を持てば、完全に専守防衛を逸脱してしまうのではないか。抑止力よりも不安のほうが大きくなるのではないかと懸念している」

 ―財源問題が注目されているが、それまでの議論は十分だったか。
 「平和憲法がある以上、敵基地攻撃能力のある兵器を保有するなら、専守防衛のあり方、例えば攻撃対象をどうするのかといった説明責任を(政治家が)国民にしっかり果たさなければならない。財源問題は大事なことだが、その前の(防衛力強化の)議論が拙速過ぎではないか」


 ―岸田政権をどうみる。
 「安倍政権のツケと言うのは変だが、大変な時にかじ取りをさせられていると思う。懸念を払拭するよう、どういう手順、議論で今に至ったのか真実を語ってもらいたい」


 ―国会議員に戦争を知る世代がほぼいなくなり、安保政策のかじ取りを不安視する声もある。
 「戦争がいかに愚かで、いかに多くの人たちが苦しみ、血と涙を流したか、ということを僕は体で知っている。体験しているからこそ、自分の考える平和を言い続けていきたいし、国政に携わるすべての人に語り伝えていきたい。これからが本番だ」


 こが・まこと 1940年、福岡県生まれ。80年衆院選で初当選し、通算10期。運輸相、自民党国対委員長、幹事長などを歴任し、2012年に議員を引退した。政治信条の柱に「平和」を据え、日本遺族会会長も務めた。03年、イラク自衛隊を派遣するためのイラク復興支援特措法案の衆院採決では退席した。