社会と個人 どう向きあうの

林住期 どのように暮らすのか。日々、自問自答する。

(432) 「私の想う国」鑑賞

 

 

 

 

 

 

 

うめきた公園を通って、梅田テアトルで9時50分からの部を鑑賞。
うめきた公園は、昨年9月にオープン。

緑が広がって、気持ちがいい。





 

こじんまりとした会場。3割ぐらいの観客。

  


映画.COMから

「チリの闘い」などで知られるドキュメンタリー映画の巨匠パトリシオ・グスマンが、リーダーもイデオロギーも不在のチリの新しい社会運動をとらえたドキュメンタリー。

2019年10月、チリの首都サンティアゴで、地下鉄料金の値上げ反対に端を発する新たな民主化運動が動きだした。リーダーもイデオロギーも存在しないその社会運動は爆発的なうねりとなり、若者や女性を中心とする約150万もの人々が、より尊厳のある生活を求めてデモに参加した。この社会運動はチリの保守的・家父長的な社会構造を大きく揺るがし、やがて2021年に36歳という世界で最も若いガブリエル・ボリッチ大統領誕生に結実する。

ピノチェト政権下にキューバに亡命し、現在はパリで暮らすグスマン監督が、目出し帽に鮮やかな花をつけてデモに参加する母親や、家父長制に異を唱える4人の女性詩人、先住民族マプチェの女性として初めて重要な政治的地位についたエリサ・ロンコンら多くの女性たちへのインタビューを交えながら、劇的に変わりゆく母国チリの姿をダイナミックかつ詩的な映像美で描きだす。

2022年製作/83分/G/チリ・フランス合作
原題または英題:Mi pais imaginario
配給:アップリンク
劇場公開日:2024年12月20日

 

www.youtube.com

 

2019年10月 150万人のデモ。
人口が2000万人弱なので、13人にひとりが戦いの輪に加わった。
地下鉄料金がが800ペソから830ペソに引き上げられたことに対する怒りが発端 (約4%の引き上げ) 。チリの低所得層は月給の30%を地下鉄の運賃に使っているという。

 

 

 

 

 

映画『私の想う国』公式サイト

 

チリについて


国の基本情報
面積: 756,000平方キロメートル(日本の約2倍)
人口: 約1,963万人(2023年 世界銀行データ)
首都: サンティアゴ
公用語: スペイン語 通貨: ペソ
独立: 1818年に事実上の独立を達成(スペインからの独立)
民族構成: 欧州系87%、先住民系13%
宗教: カトリック(15歳以上人口の70.0%)
福音派(15歳以上人口の15.1%)

チリは1970年、社会主義者であるサルバドール・アジェンデが史上初めて民主的選挙によって選ばれたマルクス主義政権を樹立しました。アジェンデ政権は、土地改革や国有化政策を推進しましたが、経済不安や社会混乱が続き、1973年、アウグスト・ピノチェト将軍率いる軍事クーデターによって政権が倒されました。

ピノチェト軍事独裁政権を敷き、弾圧と拷問が横行しましたが、新自由主義的な経済改革を導入し、外国資本を受け入れ、グローバル化が進展しました。チリは経済成長を遂げましたが、格差は広がり、社会不安は残りました。

1988年の国民投票ピノチェト政権は敗北し、1989年に民主化が進みました。しかし、軍事政権の影響は根強く、チリの政治・社会に長く影響を及ぼしました。

2019年10月、地下鉄料金の値上げが引き金となり、長年の経済的不平等や社会的不満が噴出し、全国的なデモが起こりました。このデモは「尊厳のための闘い」として広がり、政府は新憲法の制定を約束しました。

その後、2021年に36歳の若きリーダー、ガブリエル・ボリッチが大統領に選ばれ、社会改革を進めようとしました。

2022年にチリで行われた新憲法案の国民投票は、2019年のデモを受けて進められた憲法改正プロセスの一環でした。ピノチェト独裁政権下で制定された1980年の現行憲法を改正し、より平等で社会的包摂を重視する新しい憲法を制定することが目標でした。特に、先住民の権利保障や環境保護ジェンダー平等の推進などが盛り込まれ、チリの社会・経済構造に大きな改革をもたらす内容でした。

しかし、この新憲法案は2022年9月の国民投票で、反対62%、賛成38%という結果で否決されました。 反対の理由には、新憲法案が急進的すぎると感じられたこと、内容が不透明だという懸念、そして多くの有権者が新憲法が不安定さをもたらす可能性を心配したことが挙げられます。また、一部では、保守派や経済界が反対キャンペーンを展開したことも影響しました。

2023年に入ると、チリ政府は新たな憲法制定プロセスを開始しました。改めて憲法評議会が設立され、よりバランスの取れた案を作成するための議論が行われました。

2023年12月17日、チリで新憲法草案の是非を問う国民投票が実施され、反対55.76%、賛成44.24%となり、新憲法草案は否決されました。
この国民投票は、2022年9月に行われた前回の新憲法草案の否決を受けて、2回目の試みでした。今回の草案は、前回よりも保守的な内容で、私有財産権の保護や移民・妊娠中絶に関する厳格な規則が盛り込まれていました。

ボリッチ大統領は、この結果を受けて「国は分極化し、分裂した」と述べ、新憲法国民投票で制定する試みが失敗に終わったことを認めました。
政府は3度目の改憲プロセスは行わず、今後は議会を通じて年金と税制の改革を進めると表明しました。

この結果により、1980年にピノチェト軍事政権下で制定された現行憲法が引き続き維持されることになります。チリの市場指向型の経済ルールが継続するとの見方から、金融市場への影響は限定的になると予想されています。一方で、憲法改正を求めてきた国民にとっては大きな失望となり、政治に対する不満が高まる可能性があります。


 

ガブリエル・ボリッチ大統領
(Gabriel Boric Font)

ガブリエル・ボリッチは、1986年2月11日にチリのプンタ・アレーナスで生まれた政治家。クロアチア系の移民の子孫で、父と祖父は石油産業に従事していた。


略歴

ボリッチは高校時代から政治に関心を持ち、チリ大学で法律を学んだ。2011年のチリ大学学生連盟総裁選出を機に学生運動のリーダーとして頭角を現し、2014年には代議院議員に当選。2021年の大統領選挙に立候補し、公的年金制度への移行や教育・医療への投資増加などを公約に掲げた。決選投票で保守系候補を破り、2022年3月11日に第38代チリ大統領に就任。就任時36歳で、チリ史上最年少かつ世界で最も若い現職国家元首となった。

 

大統領就任後の主な活動

1.憲法改正への取り組み
ボリッチ政権は、ピノチェト時代の憲法改正を重要課題としました。しかし、2022年9月の国民投票で新憲法案が否決され、2023年の制憲議会議員選挙でも左派が敗北を喫した。
2.経済・社会政策
就任演説で公正な社会の実現に言及し、格差是正を重要政策として掲げている。
3.国際関係
日本との関係では、就任式に日本政府特派大使が出席し、二国間関係強化への意欲が示された。
4.課題への対応
憲法案の否決や制憲議会での敗北など、改革推進に苦戦している。

 

 

2019年10月、予期せぬ革命、社会的な爆発。サンティアゴの街頭には150万人が、より良い民主主義、より尊厳ある生活、より良い教育、より良い医療制度、新しい憲法を求めてデモを行いました。チリはかつての記憶を取り戻したのです。1973年の学生運動以来、私が待ち望んでいた出来事がついに現実となったのです。

 


映画に登場する女性たちの言葉が力強く、目がキラキラしている。


女性たちの言葉から


 制憲議会の議長でチリ史上初の先住民族マプチェの女性議長

決して敗北しないという意味の“ マリシウエウ” は、
歴史的な強さがある言葉です。
私は祖母から学びました。
祖母が何かを達成した時に使っていた言葉です。
私も何かを達成するにはこの言葉が必要だと。
“ マリシ” は“ 永遠に” という意味です。
“ マリシポイェユ” はあなたを永遠に愛する。
“ マリシ” をつけると全ての言葉が永遠になります。

 


彩りのある戦い、スタイリッシュだ。多様な参加の形。

 

 

 

  

アジェンデ政権 (マルクス主義政権) が、1973年、アウグスト・ピノチェト将軍率いる軍事クーデターによって倒された。足かけ4年の短期政権、今でもその衝撃を忘れない。1988年の国民投票ピノチェト政権が退陣したが、経済的不平等や社会的不満は続いた。
そして、2019年10月。

 

銃撃の 虐待の 屈辱の共犯者
沈黙するのは共犯者
嘘の共犯 暴力と屈辱の共犯者
沈黙するのは共犯者
無力さと痛み良心の喪失の共犯者
沈黙するのは共犯者
催涙ガスに侮蔑に目をつぶる共犯者
沈黙するのは共犯者

私たちを裁く家父長制 生まれたことで裁き
罰を与える ご覧の通りの暴力で
どこに居ても何を着ても私の罪じゃない
どこに居ても何を着ても私の罪じゃない
どこに居ても何を着ても私の罪じゃない
どこに居ても何を着ても私の罪じゃない
暴行犯はお前!


※ラステシスとは?
Lastesis(ラステシス)はチリのバルパライソ出身の4人組で結成されたフェミニスト・コレクティブである。メンバーはダフネ、シビラ、パウラ、レア。ビジュアルアート、演劇、デザイン、音楽などそれぞれの専門分野を活かしながらアートを通して表現活動を行っている。 

 世界も警察も注目するチリのフェミニスト・コレクティブ
 Lastesis[インタビュー]|kiwama から  
  

 


 女性の言葉を聞いていると日本の現実と通じていると感じる。
 沈黙は共犯者。現実を変えるには声を上げるしかないことも

 戦いの中で歌われる歌が心をうつ。石・鍋・缶で抗議する音がリズミカル。
 石畳を剥がして作られる石、地面に転がる石が戦いの武器となる。
 これらの映像が美しい。


ドクメンタリー映画は凄い。チリの人たちへの共感を呼び起こし、同時に自らへの問いを投げかける。あなたは共犯者になっていませんかと。

 



正月気分を吹き飛ばす映画。アジテーション風にではなく、心の中に浸透してくるような作品。
さて、今年の12月までに行われる大統領選挙が気になるところだ。そして、わが足元も

この映画の評価 90点。

 

 

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